お葬式プラザ
エコロジー葬 開発物語
エコロジー棺開発者 増田 進弘
インタビュアー 石原 正次
石原:モンゴルから帰ったばかりのようですが何をしに行っていたんですか。
増田:植林に行ってきました。エコ棺を一本買うと10本の赤松を植林するのが「エコ棺」メーカーとしての約束なんです。特約店と代理店の方々に実体験してもらって、一人でも多くのかたに生々しく語ってもらおうと、「エコフィン 生命の森」に植林してきました。それとモンゴルで活躍するNGOの方々にお会いしたり、モンゴル大学のエコロジーセンター見学など数カ所のエコロジー関係の施設を訪問してきました。
石原:植林をする理由は何なのですか。
増田:エコフィン[ノア]の主材は持続生産可能な森林経営を実践しているメーカーの紙を契約していますから、植林の必要はありません。これだけは我々トライウォール社のポリシーだから是非言っておきたいのです。エコロジーにはずっと以前から取り組んできているのです。
しかし、葬儀について調査するうちに葬儀施行から温暖化ガスがかなり排出されることが分かりました。
[ノア]のご利用1棺につき10本の植林を行い、せめて葬儀で発生する温暖化ガスの分くらいは吸収削減しておこうとしたのです。
石原:キャンペーン商品の第一号になったエコロジー葬の必要についてお話し下さい。
増田:今回キャンペーンの第一号に選ばれうれしく思っています。私たちは葬祭業に新しく環境基準が必要と考え提案させていただいています。超高齢化社会の日本は今後30年間にわたり死亡者は増加します。葬送を通じて使われる資源やエネルギーは増加する一方です。
何より木棺に使用されている合板類はある調査では50〜80%が違法伐採によるものだと言われています。その使用を削減することなどが、エコロジーと直結していることをこのキャンペーンを通じて全国の皆さんにお伝えきればと思います。
石原:丁度10年前、ヨーロッパ視察団長として、モナコの世界葬儀連盟を訪問したとき、今どんなテーマに取り組んでいるかと聞いたら「エコロジーの観点から木棺が使えなくなる日を想定している」「葬儀の総売上50万円の内、30万円が木棺の費用だから、そうなったら事業が成り立たない」「葬儀とは何かについて改めて問い直しあらゆる遺族ニーズのサービス化を試みている」と言うんです。
日本では「祭壇のなくなる日」がささやかれていましたが、木材資源や山林の保護というエコロジーの問題意識は皆無でしたからみんなびっくりしました。
ヨーロッパのエコロジー意識の高さには驚いたのですが、日本の葬儀業界における問題意識はどうですか。
増田:全国的にはまだ意識は低いのですが、話せば大切で重要な問題だとして関心を示してくださる業者の方も徐々に増えています。エコ棺がマスコミなどで取り上げられますと問い合わせが殺到するところを見ると、消費者の方々のほうが、うんと環境への関心が高いようです。
石原:ダンボールの持つイメージが悪いということはありませんか。
増田:何も見せないでダンボール製だと言うと、おっしゃる通りイメージは悪いです。
ダンボールというとほとんどの方が「ミカン箱」を想像されますから。しかし、現物をいったんご覧いただければダンボールであることには全く気付きません。むしろこれがダンボールで作られているのかと不思議がられたりかえって褒めて頂いたりしています。
石原:環境にやさしい棺であることを具体的にいうとどういうことですか。
増田:1つは、エコフィン[ノア]は、木棺に比べて省資源であること。2つ目が有害な排ガスの排出量を減らすこと。3つ目は燃焼効率が良いこと。そして、大事なことに違法伐採や無計画な伐採によらない持続的生産が可能な森林経営で生産されるパルプを使用していることです。そして、葬儀全体で排出される二酸化炭素CO2を植林により吸収・削減するという、植林プログラムを付加していることなんです。環境問題というのは、このような地味だけど小さな努力の積み重ねがとても重要だと思うんです。
石原:エコ棺開発ではどこにもっとも苦労をしましたか。
増田:特に布地です。良い柄があったと思えば化学繊維であったり、自然素材を見つけても柄が思わしくなかったりで、最終的には別注で生産することにいたしました。世の中がいかにに化石燃料を使用することで出来上がっているかを思い知らされました。
石原:数年前に私があなたと一緒に米国の工場見学をさせて頂いた時は、バカデカイ量産ラインに驚いたのですが、日本で拝見させて頂いた時、布貼りする生地が合成繊維か天然繊維かとか、デザイン性がどうとか、接着ボンドが出す煙の有毒性実験など開発や製造プロセス上でのキメの細かさが目につきましたね。
増田:日本人が製品に求める品質基準は米国の比ではありません。布貼りに小じわ1つあってもお金がもらえません。少々やりすぎの感もありますけれどもね。
石原:どんな方にどのようにお使い頂きたいのでしょうか。
増田:祭壇を用いず棺だけで葬儀をする方が全国的に増えています。お取り扱い葬儀社の意見でも、エコ棺が随分立派に見えるもんですから式場の中心にすえて、プラス生花を少々というようなアレンジでご利用頂いていることが多いようなんです。
ここのところ、各地のセミナーで消費者と直接話す機会も増えたのですが、無宗教葬を希望されている方がご利用になりたいというケースが目立ちます。ノアに何かしらの高い精神性を感じていただけるようなんです。
石原:納骨堂とセットになった理由は何ですか。
増田:棺と納骨堂の組合せ。そんな商品というかセットはこれまで全くありませんでした。お葬式が済んでも納骨するまでは、遺族にとっての葬儀は完結していません。その意味で納骨までサポートするセットには必然性がある訳です。そこに着眼した点では思い切った発想のセットですよね。老人の方と話していると葬儀をどうするかで心配している人は少ないのですが、お墓について考えている人はとても多いんです。事前設計を葬式だけで設計してもあまり意味がなくってエンディングプランの中心にはお墓問題があることは石原、増田、二人の共通認識だったもんですから、このパッケージでの発売はすぐ話がまとまりました。
納骨堂建設のいきさつは私もよく知っていますが、山林を切り開いて大規模な霊園開発をするようなことをせず、自然をそのまま生かそうという発想でしたよね。
お墓のコストのほとんどが新聞折り込みや広告代だからと、宣伝しないで売る方法を模索されていました。それがインターネットにつながったんでしょうけど。当初はそれがエコロジーだからという発想で開発したものでは全くなかったんですけれど、いまや立派なエコ発想なんだということで、今回のセットが実現したと私は理解しています。
石原:将来の夢とか呼びかけたいことがありましたらどうぞ。
増田:10億の民をもつ中国がダンボール棺に強い関心をみせています。火葬は世界の大勢ですからグローバルに取り組むべき問題でもあります。この事業を通じて同じお考えをもつ方々と国際協力ができればと考えています。よく言われていることですが、ここまで成長できた日本が今度はエコロジー技術を通じて恩返しをする番ではないかと思います。それを私が手掛けたエコ棺でできるということは素晴らしいことです。これからも使命感をもって取り組んで行きたいと思います。
石原:ありがとうございました。
開発企業トライウォール社の会社概要について