葬儀はつつしみ深く

[男性 70歳]

イラスト  隣組で長い間病床についていた白寿に近い老人が亡くなったことがありました。そのせいか葬儀なのに遺族の顔も、家の中も明るい雰囲気が漂っていました。私達は組員なので、夫婦揃って手伝いに行っていました。同じ隣近所なのですが、皆が一同に会するなんていうことはめったにないことなので、いや初めは場をわきまえたつつましさがあったのですが、いつしか、われを忘れてのこう笑を交えた高声になってしまったのでした。
 長寿を全うし、はたまたご遺族や家全体の明るさはあったとは言え、全く礼に反してしまっていたのです。このことに気がつき、その場に戻ったのはややしばらくあとでした。「年甲斐もない、なんとしたことを」と私ばかりでなく、皆んなの顔が語っていました。
 すべての人が、ご遺族同様、憂愁と哀悼の中に終始あるのが礼儀であり、葬儀本来の姿であり、はたまた常識なのにね。
 以後はあの時の失敗を噛みしめながら、その後あった葬式にもつい脱線しそうな空気になると、誰となく押さえてと、合図しあって、場の雰囲気に溶け込むよう気をつけ合ってお手伝いいただいています。葬儀はご遺族の立場になって、つつしみ深くを肝に銘じながら。


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