悲しき集中室

[大阪府 主婦 78歳]

イラスト  ある病院で主人が癌で亡くなりました。入院時に院長先生に5万円、主治医も5万円、看護婦さんに3万円、看護婦48名にはお菓子を持って挨拶する様に言われました。しばらくして主人が集中室に入れられ、30分間位で一人苦しみつつ亡くなったのです。
 毎日点滴と輸血の連続でした。いつも苦しくなくて良かったと思いました。主人は最後まで癌であることを知りませんでした。隠していたのです。点滴と輸血続きでしたが、とうとう人工の真白い液が入れられました。「もう少し」と、終わろうとする時、苦しみ始めました。看護婦さんが「おむつを」と言われましたので、すぐに病院の売店へ行きましたが、置いてありませんでした。あわてて町の薬店に走りました。雪降る夕暮れジングルベルの音を聞きつつ4軒目で特大が1枚ありました。急いで部屋に戻ると、空室です。尋ねると集中室とのこと。ドアを開くと何と蝦の様に身体を真二つにして、モルヒネと言って七転八倒の苦しみです。看護婦の姿もなく「医者を!」と言っても仲々来て下さいません。病院内で大勢の医者も、看護婦さんもおられるのに、重病人が集中室で放たれているなんて理解できません。
 おかしいと思い隣室の看護婦さんに先生を希いましたがだめです。見るからに弱って来ているので「息が止まってから先生が来ても困る」と申したら、死の2分位前に来て下さいました。集中室に入れられて一人だけで何の処置もしなくて死に致らせるなんて恐ろしいことです。毎日死人があるのでしょうが、こんな残酷な行動は許されないと思います。資格を持った医者に、無責任な態度は許せません。
 これが現実の姿です。自分の身内の者が入ってるならば、こんな事出来るでしょうか。主人が悔しい思いでいたと思います。集中室は死ぬ所ですが、もう少し人情を持て当たって下さい。少しばかり楽に死なせて下さい。お願いします。後の人の為に、私は4年後にペンを取りました。集中室は人間の醜い所を現す場所です。苦しむ度数が少ない様、医者に計って下さい。


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