2000.04
お墓にまつわるQ&A

  遺族にとって、葬儀のあとの遺骨の安置先は関心の高いものである。すでに墓を持っている人はいいが、新しく購人する人や、購人してもそのあと管埋してくれる人がいない人など、悩みはさまざまである。そこで今回は最近多いお墓にまつわる質間を取り上げてみた。


Q: 最近墓地埋葬法が変わりましたが、どんな点ですか?

A: 墓地・埋葬等に関する法律施行規則の一部が改正され、その一部は1999年5月から、残りは10月から施行されました。大きく3つあります。

1. 墓所使用者の権利の明確化
墓地使用者以外の者から改葬許可申請が行われる場合は、墓地使用者の承諾書を許可申請書に添付することが義務づけられました。

2. 無縁墳墓の改葬手続の見直し
無縁墳墓の改葬手続について、申請者の負担を軽減するために、死亡者の縁故者や無縁墳墓に権利をもつ者に対して、1年以内に申し出るべき旨を官報に掲載し、かつ、無縁墳墓のある場所に立礼を1年間掲示し、その期間内に縁故者等の申し出がなかったことを記載した書類を改葬許可申請書に添付すると変更されました。

3. 焼骨の分骨に関する規定の整備
焼骨の分骨請求があった場合、墓地または納骨堂の管理者に対して、焼骨の埋蔵または収蔵の事実を証する書類の交付を義務づけ、火葬場の管理者についてもこれを準用することになりました。


Q: 墓開きをするのでお坊さんに精抜き、精入れをして頂くのですが、お礼は精抜き、精入れ別々に渡せばよいのでしょうか。あとで一括して渡せばよいのでしょうか。

A: 古い墓のそばに墓を新しく建てる場合には、精抜きと精入れを一緒に行えますが、単純に新しい墓を建てる場合は精入れだけでよいでしょう。お寺さんへのお礼の表書きは「お布施」とします。また親族がお祝を出す場合の表書きは「建碑御祝」です。


Q: 夫の実家の墓には入りたくないのですが、どうしたらよいのですか。

A: 夫が先に亡くなり実家の墓に入った場合、残された妻が夫の実家の墓に入ることがいやな場合には、自分が入るための墓をさがすしか方法がありません。そのためには、夫が生きているうちに夫婦の墓を作っておくか、個人で入れる合祀墓や納骨堂を探しておくことが考えられます。


Q: 納骨する場合には埋(火)葬許可証が必要ですが、それを紛失したときはどうしますか。

A: 火葬した遺骨を自分の家に置いたまま許可証を紛失した場合には、それが交付されてから5年未満であれば、火葬した火葬場で「火葬証明書」を発行してもらいます。そしてそれを死亡届を出した市町村役場に提出すると、埋(火)葬許可証を再発行してくれます。
火葬場に資料がなくて火葬証明書がとれない場合は、死亡した人の除籍抄本と認め印を持参して、市町村役場に提出すれば、役所が調査してから、再発行してくれます。
なお、この場合、埋(火)葬許可証の紛失事情書というものを提出しなければなりません。法律には「墓地又は納骨堂の管理者は、埋葬許可証、火葬許可証文は改葬許可証を受埋した日から、5年間これを保存しなければならない」と規定されています。


Q: 墓地の使用権を失うのはどんなときですか。

A:
(1)定められた期限までに埋葬しない。
(2)墓地使用者が、規定の年数を経過しても連絡が無く、相続、または継承の申し込みをしない。
(3)無断で墓地の使用権を譲渡したとき。
(4)管理料を滞納して、請求されてもそのままにしておいたとき

などがあります。規約は霊園によって異なりますが、墓地を相続したときには使用権が移行します。その際、墓地使用権継承許可申請書、戸籍騰本、使用書を添付して霊園に提出します。


Q: 私は一人娘ですが、結婚することになりました。先方も一人息子です。今後、両親が亡くなった場合、それぞれのお墓はどうなるのでしょうか。

A: 昔は分家の誰かが「家」をついだり、養子をむかえたりして、断絶を防いだもので
した。昨今は同じような立場の人が増えているようです。お寺や霊園では、「家」や「血筋」が、墓地の承継の条件となります。そこでまず「墓地使用者規則」を検討し、姓が違っても権利があるのであれば、両方の墓とも守ります。あるいは両家の墓を、どちらかの墓にまとめるという方法もあります。「宗旨・宗派を間わない」霊園ならば問題はないのですが、お寺の場合は相談した方がよいでしょう。
それから、「永代供養」という方法があります。これは「守り手」がいなくなったあとの供養を、お寺に依頼しておくものです。お寺が施主代りになって、年忌法要をつとめて
くれます。この場合にはある程度まとまった費用が必要となります。


Q: 先祖のお墓をついでいるのですが、妻も子もいませんし、兄弟もいません。私が死んだあと、この墓はどうなるのでしょうか。

A: 自分の子などの承継者がいない場合でも、祭祀承継者には第三者を指定できますから、そのような人がいれば祭祀を承継してもらうことは可能です。もしそうした人がいない場合には、そのお墓は無縁になります。お墓が無縁になれば、墓地の経営者は無縁墓地を改葬して整理することができます。


Q: 夫の親戚から、夫の遺骨を分骨して、実家のお墓にも遺骨を埋葬するように言ってきたのですが、従う必要がありますか?

A: 分骨とは、遺骨の一部を他のお墓に移すことです。改葬は遺骨全部をあるお墓から他のお墓に移すことですから、改葬の手続きより簡易な手続きが定められています。分骨の場合、お墓の管理者から分骨証明書(遺骨の埋蔵の事実を証明する書類)を発行してもらい、分骨した遺骨を納めるお墓の管理者にその証明書を提出すれば、分骨できます(墓地、埋葬等に関する法律施行規則五条)。
死者の遺骨の所有権については、死者の祭祀承継者に所有権があります。したがって、祭祀承継者があなたならば、夫の遺骨に対する権利はあなたが持っていることになり、遺骨の所有者ではない親戚の要求があっても、あなたが拒否すれば分骨できません。


Q: 夫の遺骨を夫の実家に納骨しましたが、このたび夫のお墓を作って遺骨を移すことになりました。どのような手続きが必要になりますか。

A: いったん納骨した遺骨を他のお墓に移すことを改葬といいます。この許可を得るまでの手続きはつぎのようになります(墓地、埋葬等に関する法律施行規則二条)。
(l)新しいお墓を購入する。
(2)納骨しているお墓の管理者から、納骨証明書を発行してもらう。
(3)新しいお墓の管理者から、受入証明書を発行してもらう。
(4)現在お墓のある市区町村長に改葬許可の申請をし、改葬許可証を発行してもらう。
(5)お墓の管理者に改葬許可証を呈示して、お墓から遺骨を引き取る。
(6)新しいお墓の管理者に改葬許可証を提出してお墓に遺骨を納骨する。
改葬する場合、墓地の管理者が、納骨証明書の発行を拒否することがあります。このように墓地管理者が証明書を発行しない場合には、納骨の事実を証明する資料を示して、改葬の許可を申請することもできるとされています。


Q: お墓を引き継いだのですが、相続税はかからないでしょうか。また墓石がいたんでいるので、この機会に建て直そうと思いますが、相続税の控除は受けられますか?

A: お墓を引き継いた場合は相続税はかかりません。お墓に関する権利は祭祀財産として、「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」は非課税とされています(相続税法12条1項2号)。
ただし祖先祭祀とは関係のない脱税や鑑賞が目的である場合には、祭祀財産とはいえず、相続税が課税されることがあります。お墓の建直しの費用については、相続税の控除の対象にはなりません。葬式費用は直接要した費用については控除の対象になりますが、お墓の権利や墓石などの購入費用は控除の対象にはなりません。


Q: 神式では五十日祭に納骨をするそうですが、どんなやり方ですか。

A: 神式は本来土葬でしたから、葬儀のあとすぐに埋葬しました。現在は火葬がふつうですので、遺骨を埋骨するわけですが、墓が用意されておれば当日が一般的で、五十日祭までには納骨するといいます。これは埋葬祭といい、墓前に遺骨を安置し、神式の式式典を行ったあと埋骨します。式に必要な道具は神職の人に用意していただけます。


Q: キリスト教ですが、葬儀後の納骨はいつごろするものですか。召天記念日のときですか。

A: キリスト教でも土葬が本来でしたので、葬儀の当日に埋葬しました。現在では火葬にした遺骨はいったん自宅に安置しておきますが、プロテスタントでは死亡から1ケ月後の召天記念日に埋葬したり、カトリックでは追悼ミサのときに埋葬します。しかし特に決まりはありません。

 


宗祖の墓

日本人の9割以上が仏教に属しているが、その教祖の墓は教団が管理していたり、ゆかりの深いところにある。

・天台宗の宗祖・最澄(767〜813)の墓は、京都の鬼門にあたる比叡山の東塔にある。巨杉に囲まれた浄土院が墓所である。浄土院では、いまも僧侶が宗祖の霊前へ食事を捧げ読経を続けている。山上には、延暦寺三代座主の円仁(794〜864)の廟所がある。

・真言宗の宗祖・空海(774〜835)が、和歌山県の高野山に真言宗の道場である一院を建立したが、この密教の聖域は、奥の院として広大な墓域をかかえている。彼の御廟は、奥の院のもっとも奥まった地にあり、今も入定時のままの現身が残っていると信じられている。山上に墓地を設ける人によって、この地は先祖供養の一大霊場となる。さらに天皇・公家・武家や一般大衆の各時代の墓石塔が立ち並んでいる。

・融通念仏宗の宗祖・良忍(1072〜1132)の墓所は、京都大原の三千院にも近い、来迎院の隣接地にある。融通念仏を唱えて各地を遊行教化した彼の墓所は、河内の叡福寺にもある。

・浄土宗の宗祖・法然(1133〜1212)の御廟は、京都東山の一郭に広大な境内を占める知恩院にある。比叡山に登り、421歳まで黒谷に過ごし、のちに専修念仏を説き、多くの帰依者を得ている。のちに四国へ流され、80歳で京都東山の大谷で示寂している。法然の廟とか墓といわれるものは、京都嵯峨野の二尊院にもある。

・臨済宗の宗祖・栄西(1141〜1215)の廟は、京都の市中の臨済宗建仁寺派の本山建仁寺境内にあり、開山堂と呼ばれている。禅宗が鎮護国家に有効であることをとき、北条政子と源頼家の帰依をうける。

・臨済宗妙心寺派の中興の祖・白隠(1685〜1768)の墓所は、富土山の見える静岡県沼津市原の松蔭寺境内にあり、同寺には彼の木像が奉安されている。墓所は寺院墓地にある。15歳で松陰寺で出家した白隠は、84歳の入寂まで、『夜船閑話』や『遠羅天釜』といった著によって大衆にわかり易く仏教を説いた。

・普洞宗の宗祖・道元(1200〜1253)の墓所は、福井県永平寺境内の承湯殿霊廟としてある。末の天童山の如浄に学び、帰朝後、只管打坐の禅を説き、『正法眼蔵』95巻をはじめ、多くの著作をのこしている。

・華厳宗の学僧・明恵(1173〜1232)は、後鳥羽院から京都栂尾の地を賜わり、高山寺を華厳宗の道場として再興した。その山内の一郭に御廟が残されている。明恵は、はじめ華厳を学び、東大寺の戒壇で具足戒を受けている。生涯にわたりインド仏跡の巡礼を志したが急病で果たせなかった。60歳で人寂した。

・浄土真宗の宗祖。親鸞(1173〜1262)と、中興の祖といわれる蓮如(1415〜1499)の廟所は、山科への入口近くに広大な霊廟と墓域を占める大谷本廊にある。親鸞は、他力本願に回心し、越後へ配流にもなったが、後年『教行信証』を著わし、他力信心が如来から与えられることを説いている。また、本願寺七世存如の長男として生まれた蓮如は、各地の門徒に送った御文(御文章)によって、活発な教化活動を行った。

・日蓮宗の宗祖・日蓮(1132〜1282)の廟所は、山梨木県身延の久遠寺山内にある。10年にわたって比叡山に修学し、天台法華教学を習得して独自の法華経観による仏教体系を打ち立てた日蓮は、たびたびの迫害や弾圧を受けながらも、『立正安国論』や『開目抄』『観心本尊抄』『撰時抄』などを著わした。60歳。

・時宗の宗祖。一遍(1239〜1289)は、遊行土人と呼ばれ、人々に念仏を勧める遊行行脚に明け暮れている。死期をさとった彼は兵庫県和田岬の観音堂に入った。彼の御廟は、神戸市兵庫区の真光寺の境内にある。

 


有名人の墓所

墓は管理する者がいなくなれば処分される時代であるが、さすが著名人の墓については、誰が管理しているのか、ファンが訪ねる先となっている。

●豊島区染井霊園

高村光大郎 /彫刻家・詩人 詩集「智恵子抄」
二葉亭四迷 /作家
岡倉天心 /近代美術界の指導者

●豊島区雑司ケ谷霊園

サトウハチロー /詩人
泉鏡花

/作家 「高野聖」

夏目漱石 /作家 「明暗」
竹久夢二 /画家
大川橋蔵 /俳優 「銭形平次」
永井荷風 /作家 「腕くらべ」
小泉八雲 /作家 「怪談」

●府中市多磨霊園

江戸川乱歩 /推理作家
北原白秋 /詩人 随筆「雀の生活」
有島武郎 /作家 「カインの未商」
菊地寛 /作家 「父帰る」
小山内薫 /劇作家 「西山物語」
岡本かの子 /作家 「河明り」
ゾルゲ /ドイツ特派員
堀辰雄 /作家 「風立ちぬ」
三島由紀夫

/作家 「金閣寺」

吉川英治 /作家 「宮本武蔵」
山本五十六 /海軍軍人。
与謝野晶子 /歌人 「みだれ髪」
舟橋聖一 /作家 「花の生涯」
野村胡堂 /作家 「銭形平次補物控」
向田邦子 /エッセイスト

●港区青山霊園

尾崎紅葉 /作家 「金色夜叉」
国木田独歩 /作家 「武蔵野」
斎藤茂吉 /歌人 「赤光」
志賀直哉 /作家 「暗夜行路」

●小平市小平霊園

野口雨情 /童謡詩人 「十五夜お月さん」
宮本百合子 /作家 「伸子」
土井栄 /作家 「二十四の瞳」
有吉佐和子

/作家 「恍惚の人」

●その他

三木清 哲学者 中野区東中野正見寺
林芙美子 作家 中野区万昌院功禅寺
今東光 作家 台東区寛永寺第三霊園
北村透谷 詩人 東京都港区瑞聖寺
井伏鱒二 作家 東京都青山持法寺
正岡子規 俳人 東京都北区大竜寺
溝康太郎 作曲家 築地本願寺和田堀廟所
樋口一葉 作家 築地本願寺和田堀廟所
池波正太郎 作家 台東区西浅草西光寺
上田 敏 詩人 台東区谷中霊園
伊藤左千夫 作家 江東区普門院
柴田練三郎 作家 文京区小石川伝通院
芥川龍之介 作家 豊島区慈眼寺
遠藤周作 作家 府中カトリック墓地
寺山修司 詩人 八王子市新高雄霊園
松本清張 作家 八王子市富士見台霊園
藤沢周平 作家 八王子市八王子霊園
中里介山 作家 西多摩郡禅林寺
太宰 治 作家 東京都三鷹市禅林寺
森 鴎外 作家 東京都三鷹市禅林寺
直木三十五 作家 横浜市長昌寺
萩原朔大郎 詩人 群馬県前橋市政淳寺
柳田国男 民俗学者 川崎市春秋苑
山岡荘八 作家 川崎市春秋苑
尾崎士郎 作家 川崎市春秋苑
大佛次郎 作家 鎌倉市寿福寺
小林秀雄 評論家 鎌倉市東慶寺
西田幾太郎 哲学者 鎌倉市東慶寺
鈴木大拙 禅学者 鎌倉市東慶寺
大宅壮一 評論家 鎌倉市瑞泉寺
五味康祐 作家 鎌倉市建長寺回春院
川端康成 作家 鎌倉市鎌倉霊園
山本周五郎 作家 鎌倉市鎌倉霊園
開高 健 作家 鎌倉市円覚寺松嶺院
小林多喜二 作家 小樽市奥沢共同墓地
石川啄木 詩人 函館市立待岬入口
宮沢賢治 詩人 岩手県花巻市身照寺
長塚 節 作家 茨城県結城郡の共同墓地
葛西善蔵 作家 青森県弘前市徳蔵寺
坂口安吾 作家 新潟県新津市大安寺
新田次郎 作家 長野県諏訪市正願寺
高橋和巳 作家 静岡県富士霊園
若山牧水 歌人 静岡県沼津市乗運寺
折口信夫 民俗学者 大阪市浪速区願泉寺
谷崎潤一郎 作家 京都市左京区法然院
稲垣足穂 作家 京都市法然院墓地
原 民喜 作家 広島市中区円光寺
中原中也 詩人 山口市吉敷上東墓地
種田山頭火 俳人 山口県防府市護国寺
寺田寅彦 随筆家 高知市王子谷墓地
壇 一雄 作家 福岡県柳川市福厳寺
夢野久作 作家 福岡市博多区一行寺

 

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